HINT

「江戸川区をパラスポーツの街へ」
「日本一パラを語れる女子アナ」久下真以子氏に聞く、
江戸川区のパラスポーツ振興の現在地

「三度の飯よりパラリンピックが好き」と語り、ご自身も精力的に取材や執筆を通じてパラリンピック競技とパラアスリートの魅力を社会に発信している、フリーアナウンサーの久下真以子氏。今回は、そんな「日本一パラを語れる女子アナ」久下氏にご自身のパラスポーツとの関わりのきっかけや、江戸川区が目指す「誰もがスポーツを楽しめる街づくり」、えどがわ未来カンファレンス委員としての取り組みについてお話を伺いました。

久下さんがパラスポーツの魅力を知ったきっかけをお聞かせください。

 そもそも私がアナウンサーを目指したのは、アナウンサーをやっていた同級生の父親に紹介されたアナウンススクールに行ったことがきっかけです。普段何気なく話している日本語の難しさと奥深さを知り、興味を持つようになりました。そこから大学卒業後、徳島県の四国放送に2年、NHK高知放送局に3年。NHK札幌放送局で2年という経験を経て、2015年4月からフリーアナウンサーとして活動するようになりました。

 元々スポーツは好きだったのですが、パラスポーツの魅力に気づいたのは高知放送局に在籍していた2011年に池 透暢(いけ ゆきのぶ)選手を取材させていただいてからです。
 今では車いすラグビー日本代表のキャプテンも務める池選手ですが、当時は車いすバスケットボールの選手として2012年のロンドンパラリンピックの代表入りを狙っている最中でした。左手に障害があり、ほとんど右手一本でプレーしているにも関わらず、「右手だけでロンドンに行ってやるんだ!」という強い意志を持つ池選手の姿に強い感銘を受けて、パラスポーツのメッセージ性を知ったのでした。
 そこから「パラスポーツの魅力を世の中に発信したい!」と考えるようになり、フリーアナウンサーになった頃から、担当番組の中でパラアスリートの方々にご出演いただく企画を自ら提案して作るようになりました。

 しかし、待っているだけでオファーが来るものでもありません。そのため私は自分から積極的にパラスポーツの会場を訪れ、高知で得たパラスポーツへの熱意と、札幌時代の上司にとことん鍛えられた取材力を武器に、パラアスリートの方々への取材やパラスポーツの記事の執筆も行うようになりました。

パラスポーツ取材の経験が豊富な久下さんから見て、江戸川区のパラスポーツに関する取り組みは、どのように映りますか?

充実しているパラスポーツの「場」

 江戸川区が「東京2020パラリンピック22競技“できる”宣言!」をしていることは、報道を通じて知っていましたが、22競技の1つであるパラ馬術をできるようにするために馬まで揃える自治体は、私も記憶にありませんね。「何としてでも障害者にスポーツの場を提供するんだ!」という区の姿勢が、とても素晴らしいことだと思います。

 実はパラスポーツをするうえでの一番の悩みが、「練習の場所が少ないこと」なんです。それは第一線で活躍するパラアスリートであっても例外ではありません。2018年6月、お台場にパラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」がオープンしましたが、それでもまだまだ足りません。車いすバスケットボールのように普通の体育館でできそうな競技でも、車いす競技だと床に“松やに”やタイヤ痕が付着することを理由に体育館を使えないという自治体も存在するのです。そのような中、江戸川区では車いすでの体育館利用を断ることは一切ないと聞いていますし、「“できる”宣言!」として積極的に障害者のスポーツの「場」づくりをしています。まさに他自治体の模範になる取り組みですので、他自治体も追随して、日本中でパラスポーツの環境が充実して欲しいと思います。



障害のある子どもたちが、スポーツへの第一歩を踏み出せる環境

 また、パラスポーツは競技用の義足や車いすが非常に高価で、気軽に挑戦することが難しいという課題もあります。そのため、まずは身近なところで道具も借りながら体験できる環境があるということは、スポーツへのハードルが高い障害のある子どもたちにとって、非常に心強いと思います。子どもたちに限らず、パラスポーツの裾野を広げるという意味においても、大変有効です。
 「パラスポーツを体験してみたい初心者も本格的な練習をしたいパラアスリートも、江戸川区に行けば大丈夫」という、パラスポーツの聖地のような存在になってくれることを期待します。

取材当日は江戸川陸上競技場にて、EDORIKU車いす陸上教室が開催された

久下さんはえどがわ未来カンファレンスを通じて江戸川区はどのように変わっていくと思いますか。

 私が「カンファレンスの委員に選ばれた」と聞いたときは、正直なところ「私でいいんですか…?」と考えてしまいました。メンバーも顔ぶれ豊かで、第1回のカンファレンスで一堂に会したときにはみなさんに圧倒されてしまいました。また、私がパラスポーツを専門としていたこともあり「共生社会」と聞くと「イコール障害」というイメージを思い浮かべがちだったのですが、障害だけでなく性別や年齢、国籍といった様々な多様性も含めての「共生」なのだと再認識したのもそのときでした。

 私には「パラスポーツ」だけでなく「30代女性」という属性もありますので、カンファレンスでは私自身が興味を持っている「子育て」に関わる分野でも積極的に意見を発していきたいです。とくに江戸川区でも毎年定員を増やして対策している「待機児童」の問題や、国や自治体から助成金も出ている「不妊治療」といった分野を考えていきたいです。

 「誰もがスポーツを楽しめるまちづくり」という面では、障害の有無に関わらず一緒にパラスポーツを楽しめる未来を目指していってほしいです。「パラスポーツは障害者のスポーツ」と思われがちですが、見方を変えれば「障害を持っていてもできるスポーツ」です。健常者も含め、みんなで楽しめるからこそ、共生社会にとって無くてはならない文化として広がっていってほしいなと思います。

今回の話を聞いた方

久下真以子 氏

大阪府出身。フリーアナウンサー、スポーツライター。四国放送アナウンサー、NHK高知・札幌キャスターを経て、フリーの道へ。2011年にパラスポーツを取材したことがきっかけで、パラ取材を志すように。キャッチコピーは、「日本一パラを語れるアナウンサー」。現在は、パラスポーツののほか、野球やサッカーなどスポーツを中心に活動中。2020年より、「えどがわ未来カンファレンス委員」に選出