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第1回 えどがわ未来カンファレンス

2020年10月12日、「第1回えどがわ未来カンファレンス」が江戸川区船堀にあるタワーホール船堀にて開催されました。「えどがわ未来カンファレンス」は江戸川区の未来を考えるために発足したプロジェクト。様々な場所で活躍する委員を招きそれぞれの立場から意見を交換し合うことで、これからの江戸川区をより良くしていくアイデアが生まれることを目指します。

キックオフとなった1回目は、17名の委員の方々にお集まりいただきました。

  • 江戸川区で生まれ育ち、花火という芸術的側面と柔道のレフェリーというスポーツ的側面を持つ宗家花火鍵屋15代目・天野安喜子さん
  • 特別支援学校の校医や法務省で刑務所・少年院などでの診療経験を経て、そうした人たちも生きやすい未来を目指す総合内科専門医・おおたわ史絵さん
  • 江戸川区の防災に携わり、ゼロメートル地帯でのハザードマップの作成や広域避難に詳しい東京大学大学院情報学環特任教授・片田敏孝さん
  • 企業・自治体とともに国連の活動目的を若年層に対して発信している国連の友Asia-Pacific代表理事・金森孝裕さん
  • 江戸川区在住で現役のアスリートとして東京パラリンピックへの出場を目指している車いすラグビー選手・壁谷知茂さん
  • 行政学・地方自治論・公共政策論を専門とし、国際的な自治体の団体でも専門員を務める明治大学経営学部公共経営学科教授・菊地端夫さん
  • “日本一パラを語れるアナウンサー”のキャッチコピーで多くのパラリンピック競技の取材に携わってきたフリーアナウンサー・久下真以子さん
  • 2016年に日本に帰化した際には江戸川区を本籍地に選び、現在もバリアフリー化された日本の観光地の情報を海外に発信しているアゼリー江戸川チーフマネージャーのグリズデイル・バリージョシュアさん
  • 企業のサステナビリティ委員を務めるなど、多数の企業・団体に多様な文化・価値観の中で活動していく術を伝授している思考家・白土謙二さん
  • 自身の手掛ける女性誌で複数回、1冊丸ごとSDGsを特集するという先進的な試みを続ける講談社FRaU編集長兼プロデューサー・関龍彦さん
  • 江戸川区で30年以上にわたって、ぜんそくの子どもたちを対象とした水泳教室やマスターズ水泳の普及に尽力しているローマ五輪女子100m背泳ぎ銅メダリスト・竹宇治聰子さん
  • デザインの持つ力と最新のテクノロジーの力を融合させ、世の中に新たなイノベーションを提供する株式会社ロフトワーク代表取締役・林千晶さん
  • 1991年に来日したのちオランダ大使館勤務なども経験し、現在は翻訳業務や大学・外務省等でオランダ語を教えるオランダ語教師のハンス・デ・モスさん
  • 環境・エネルギー政策論や科学コミュニケーションを専門とし、「エコタウンえどがわ推進計画策定委員会」でも委員を務めた東京大学教養学部環境エネルギー科学特別部門客員准教授・松本真由美さん
  • 東京ガールズコレクションを運営し、強い発信力を活かして若年層にSDGsの啓発活動を行っている株式会社W TOKYO代表取締役社長・村上範義さん
  • 江戸川区で生まれ育ち、直近で区の教育現場の現在を体感してきた若者の視点を持つ乃木坂46・山崎怜奈さん
  • 様々な特性を持つ自身の視点も活かしながら、福祉の現場からアートを発信するデザイナーのライラ・カセムさん
  • (五十音順)

年齢・性別・職業・人種も異なる多彩な委員にご出席いただき、江戸川区長の斉藤猛が座長を務めながら自己紹介で各委員それぞれの得意分野について情報交換を行いました。

江戸川区の紹介

自己紹介の後には斉藤区長から、江戸川区が直面している課題の説明がなされました。35~49歳の年代層を中心に「転出超過」が続いている現状。加えて不動産取引の際に区内の7割を占める“海抜ゼロメートル地帯”の存在とそれを示す水害ハザードマップの説明が義務化されたことや、保育所等の定員を増やしているものの「待機児童」が23区内で最多となっていること。これらの理由から区内への転入希望者が減ることを懸念しており、「2100年には区内の人口が25万人減少する」といった試算もあるなど看過できない現状が斉藤区長の口から語られました。

解決すべき課題を明示したうえで、次に語られたのが「江戸川区が目指す主な目標」です。

  • 緑を増やす

    江戸川区民が「江戸川区の一番の魅力」と語る「水と緑の多さ」をより充実させるため、区民一人あたり「樹木数10本・公園面積10平米」を目指します。

  • 水辺を守る

    2018年に都内で初めてラムサール条約の湿地に登録された自然の宝庫であり、都心から電車で15分という世界的にもまれに見る近さの葛西海浜公園をはじめ、豊かな自然環境を守ります。

  • 誰もがスポーツをできるように

    人生に不可欠とされている「運動」「生きがい」を同時に満たすスポーツを、区民の誰もが行えるようにするという目標です。そのために、パラリンピック競技22種目全てを江戸川区内の施設でできるよう整備を進めています。

  • 共生社会の実現

    現在、区民の5%、37,000人を占める外国人の方は、2100年には16.5%に上昇するとされています。2021年4月には「SDGs推進センター」が立ち上がるなど、人種や人格、個性を尊重しあって暮らしていく共生社会を実現するための取組みを続けていきます。

  • 区民の生命・財産を守る

    水害や首都直下地震など、今後発生が予想される災害から区民を守るため、あらゆる対策を講じます。「ここにいてはダメです」というフレーズを使ったハザードマップの作成は賛否両論もありますが、否定的な意見も大切な区民の意見のひとつとしてしっかりと向き合い区民全員の生命・財産を守っていきます。

と語り、そのためにも「SDGsの17のゴールをテーマにしながら、様々な議論を交わしていきたい」と、このカンファレンス開催に込めた思いの丈を委員に伝えました。

各委員からのコメント

斉藤区長から現状と展望の説明を受けた委員からは、「江戸川区の魅力を知った」という声や「ここに課題があるのではないか」という指摘など、いくつもの感想が飛び交いました。

  • <水害>

    避難のとき避難所で障害のある人たちも避難を続けていけるかどうか。流動食しか食べられない赤ん坊のご飯・おむつなども用意し「避難しても大丈夫」という安心な場所を提供してほしい。

    ゼロメートル地帯になる7割の地域の人が避難をしなければならないが、残りの3割の場所に大規模な防災拠点を作ると、同じ区内で区民も安心できるのではないか。また、そうした施設で、SDGsの「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「13.気候変動に具体的な対策を」に関わる太陽光発電や水素エネルギーを積極的に使っていけると良いのではないか。

    以前、台風が上陸したときに、ハザードマップを見た友人から「そこにいてはダメだよ」という連絡があった。その時は区内の避難所が見つけられず埼玉の友人宅に避難したが、ハザードマップがあったおかげで友人に気づいてもらえた。ハザードマップが非常に役に立った。

    江戸川区がゼロメートル地帯というのは気にしなくても良いのではないか。オランダも同じ状況だが、魅力があれば人は来るもの。

    堤防道路を走ると、川の水面よりも屋根が低い位置にあることがわかる。これらが切れたら大変なことになるのは誰の目にも明らか。「いつもいてはダメ」というわけでなく、その日その時だけ「ここにいてはダメ」ということがわかるようにすべきだ。自然豊かというのは「恵み豊か」「災い豊か」。自然に近づく、ということはこのような意識を持てるかどうかだと考えている。

    日本の防災の最大の課題は、要介助者の方がたくさん亡くなること。しかし、その課題の解決策を考えるとき「健常者がお年寄りをどう助けていくか」という考え方ではいけないと思う。誰しも歳を取ればお年寄りになっていくもの。「未来の自分がどういう暮らしをしたいのか」という観点から考えていきたい。

  • <子育て>

    35~40代の子育て世代は待機児童の問題をシビアに見ている。この問題を解決していかないと女性進出と子育ての両立ができないのではないか。

    子育て世代にとっては、東京に暮らしながら自然環境に恵まれた場所に住めるのは非常に魅力的である。

    子どもが中学受験など、区外で過ごす時間が長くなってきたときに、親には転出するか江戸川区に残るかの判断が出てくると思う。親も20代の頃に比べて、引っ越す財力の余裕などがでてくる頃。「親戚が近くにいる安心感があるから」など、江戸川区に残ることを選択する理由を作ることが重要である。新しく迎え入れることも大切だが、いま住んでいる区民に目を向けることも重要である。

    江戸川区の方たちと交流を持つと、とてもフレンドリーで生活面・経済面・精神面でゆとりを持っていて「何かお手伝いをしたい」という思いを持っていると感じる。そのような方たちが習い事の最中に、同じ習い事に来ている子育て中のお母さんたちに「私が子どもを預かっているから行ってきなさい」と、手助けができるようになると良いのでは、と感じた。子育て以外にも色々な問題はあるが、ひとつずつ誰かが提案をして、少しずつ手伝いをするようになれば、(人と人は)つながっていくはずである。

    デジタルを知らない高齢者にもデジタル技術の義務教育をしてみてはどうか。「義務」という言い方が適切でなければ、「教育を受ける権利」でも良い。それを小・中学校でやると、おじいさん・おばあさんが子どもの顔が見たくて行くのではないかと思う。「子どもの顔が見たいから仕方なく学校へ通っている」という口実があっても良い。

  • <転出超過>

    転出された方がどのような理由で転出したのか。水害リスクなのか、待機児童の多さなのか。そのあたりの理由を知りたい。

    (転出超過)の詳細なデータがあれば、具体的な政策ができるのではないか。

    区の中でどの地域で減って、どの地域で増えているかという丁寧な分析が必要である。
    住宅の施策は、20代・30代・60代・70代が住む家・地域によって、求められる条件は変わってくる。これを「住みこなし」という。どのライフステージでも区内で住めるような、住宅すごろくができるような地域づくりも必要である。

    昔は部屋探しをしていても、ペットを飼っていたり外国人であることなどを理由に大家に断られることも少なくなかった。今は減ってきているが、まだそういう考えは残っているのではないか。

    私は、人が「その地に暮らしたい」と思うのは便利だからなどではないと感じている。「人に思われること」「人とつながっていること」。人と人のつながりが、暮らしていく街には必要である。

    人口が減るのは全国各地で同じこと。だが日本国民全体は減っているが、外国人は増えている。それを、「結果増えている」ではなく「江戸川区として増加させている」というようにアピールしていくことが必要ではないかと思う。

    転出者が多い原因と、逆に全国で増加している街は江戸川区と何が違うのかを知りたい。

  • <パラスポーツ・障害者>

    22競技できるのは素晴らしい。大会をゴールではなく通過点と捉えて街全体をバリアフリーにし、上り坂・下り坂にまで配慮した障害者の人たちが住みやすい江戸川区にしていってほしい。

    パラ競技22種目できるのは素晴らしい。合わせて、障害者の人たちがスポーツを始められる環境を整えることも意識してほしい。障害者の人たちがスポーツをするためには、競技をする場所だけでなく、競技用の道具を運ぶ自動車が必要になるなど、「スポーツをする」に至るまでにもハードルが存在する。そうした環境の整備は行政だけでなく民間企業の協力も必要である。行政の取組みをどのようにして民間企業に落とし込んでいくかを考えていく場にできれば良いのではないか。

    日本の駅では、エレベーターはあるが、エスカレーターは上りしかない駅が数多くある。上りのエスカレーターすら無かった30年前と比べたら良い変化だが、今後は下りのエスカレーターを作ることも考えないといけない。

    以前デンマークで「20人の障害者と150人の健常者が一緒に暮らす街」を見た。デンマークにはそういった土地がたくさんあった。日本でもそれを実現したい。日本では「障害者」「パラスポーツ」のように機能で分解してしまうが、混在していいのだと感じている。

    以前、障害者の方々と一緒に活動したいと思いアクションをしたときに、障害者のご家族が障害を隠したがることがあった。そのような雰囲気を変えていければと思う。

  • <情報発信>

    江戸川区は海外の方に知名度が無いのが残念である。PR動画を見ていても、海外の方が喜びそうな良い場所が多い。海外向けにも力を入れて発信をしていくのが良いと思う

    どんなきれいなことを言っていても「他人ごと」では意味がない。「自分ごと」「隣の人ごと」にできていなくてはいけない。転出者が増えているのも「隣の人を知らない」ということ(が原因)なのではないか。マクロで数字を語るのではなく、誰かをイメージしながらもっとミクロで考えて話し合っていきたい。カンファレンスでは本音でぶつかり合いたい。

    「伝えること」と「伝わること」は違う。一方的に伝えようとしても、それが伝わっていなければ意味がない。漫画・小説を使ったり、ここにいる方々が持つような属性を活かしたエンターテインメントを使ったりするなど。その人が「好きだから耳を傾ける」という構図を描いていきたい。良い話は伝わりやすく、人にも言いたくなる。みんなが言いたくなるようなものを、このカンファレンスでも作っていきたい。

    これから先、区外の人へ江戸川区のことを発信していくことは必要不可欠である。区民が減っていくのは見えていること。住民が減って税収が減りながら課題が増えていくと、最終的には財政が破綻してしまう。だからこそ、区の外側にいる企業や大学、NPO・NGOなど区外の協力者を作っていく必要がある。

    PR動画を見て「こんなにも良いところがあるのだな」と知ったが、逆にこの会に参加している区民の方々にも伝わっていないのは、厳しい言い方をすれば「PR力が足りていない」と感じてしまった。人間の行動パターンとして「認知」「興味」「行動」という流れがある。江戸川区の魅力をコンテンツ化・エンターテインメント化することで、広く認知をしてもらうところにつなげていければいいと思う。ちょっと短絡的な目線かもしれないが「SDGs推進の江戸川区」として認知してもらうことから始めるのも選択肢だと思う。

  • <SDGs>

    コンビニなどでSDGsのバッジが売られているのを見かけるが、グッズが置いてあるだけでは「SDGsとは何なのか」がわからない人は多いと思う。まずはその意味を浸透させて、SDGsの価値観が当たり前になっていく世の中を目指すべきではと感じた。

    人は、想像をするために情報を必要とする。「SDGs」という言葉だけを聞いても、どういう内容なのかを知らないと自分事として捉えられない。だからこそ「楽しみながら学ぶ」というコンセプトのもと、エデュケーション(教育)とエンターテインメント(娯楽・楽しみ)を融合したエデュテインメントを駆使して、難しい課題をわかりやすく説明する必要がある。「共生社会」という言葉も、大きな概念はわかるが、どのポイントについて取り組んでいくかを明確にしないと話だけで終わってしまう。このカンファレンスでみなさんとどこをポイントにするか絞っていくこともしていきたい。

    共生社会の中で、「不登校」や「引きこもり」などもあり、「対象となる項目が多い」と感じた。カンファレンスでは、1つ1つ切り分けて「どういったところに注視するか」をしっかり認識を共有し、サポートを考えていきたいと思う。

    目標とするビジョンがまとめられると、きれいな文章にして額縁に入れられて会議室に飾られる。そのような「ビジョンの額装化」をしてしまうと、何の効果も生まない。下手な文章でも良いので、読んだ人がやる気になるビジョンを作っていくべきである。

    欧米のSDGsのように「いつまでにこれだけの量をやる」「これだけの改革を達成する」など、はっきりと数値目標を掲げることが大切である。また、日本ではサステナビリティレポートに失敗事例を書いているものを見たことがないが、困っていること・反省したことを書き残すことは難しい課題に取り組むうえで非常に重要である。失敗を自覚しない限り成功することはない。また、SDGsで設定されている17のゴールは世界共通のものである。考えるべきは、その次にある18番目のゴール。江戸川区ならではの本当のゴールを18番目に設定すべきである。SDGsを認めながらも違うアプローチにしていくことが大切である。

  • <2100年に向けて>

    約80年前にできた江戸川区がこれから80年先の2100年を目指すにあたって、過去のトレンドを基に推計するのではなく「どのような社会にしたいか」というビジョンを設定していくことが大切である。2100年にそのビジョンに到達するため、「2090年には何ができるか」「2080年には何ができるか」と考えるバックキャスティングという考え方で議論をできれば良いと思う。

  • <チャウドリー大使メッセージ>

    「未来に向けて」このキーワードがまさにSDGsという世界共通言語に一番大切なことである。このカンファレンスを通じて、世界に向けてメッセージを発信していこうと思う気持ちをみんなに持ってほしいと感じる。コロナ禍で世界の価値観が変わった。それは、SDGsの目標達成にも不可欠な、経済なのか、ロックダウンなのか。人々は都市に集中していくが、同時に自然環境とのバランスをはかるという、複合的で多面的な新感覚なバランスをもつ都市を世界のモデルケースとして活動していったからである。私はスタッフから数多くの江戸川区のレポートを受け取り、目にしてきた。私が注視したのは、大都市・東京のセントラルステーションから15分の利便性がありながら、海水浴場の許可を取り、東京のラムサール条約の基準を維持してきた自然環境と融合しているのが江戸川区の都市である。江戸川区ならではの共生社会を今後も目指してほしいと思う。誰もが安心して暮らせる街、男女平等な街。環境と融合する街。このカンファレンスの活動を、国連本部のレポートに載せられることを強く期待している。

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